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 トップページ > よみもの > 10月16日第1号  


NPOや共生社会についての時評を月2回更新でお送りします!


タイトル NPO時評
著者 柏木宏
連載 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回

第2回

国勢調査とNPO 1
アンダーカウントの問題

 10月1日、全国一斉に国勢調査が行われた。
今回の調査では、調査員が住民の協力がえにくかった、という報道が少なくない。個人情報保護法の施行の影響もあり、プライバシーが侵害されることを懸念した人が多かったためではないか、といわれている。しかし、この問題に対して、NPOがなんらかの行動を起こしたということは伝わってこない。特に目立った動きはなかったのだろう。

 5年前のアメリカは、まったく違っていた。
2000年の人口統計に当たり、NPOがさまざまな活動を繰り広げていたのである。最も顕著な動きは、いわゆるアンダーカウントを抑制するためのものだ。

 アメリカの人口統計では、常にアンダーカウントが問題になる。人口統計の調査に回答しない人々により、実際の人口より少ない人数となることが、アンダーカウントだ。逆に、オーバーカウントもある。人口統計に2度、3度回答してしまうことで、人口が水増しされてしまうことだ。ちなみに、2000年の人口統計で640万人が未回答だった、と人口統計局は推測している。総人口の約2%である。

  なぜ、アンダーカウントが生じるのか。プライバシーの問題から回答しないケースもある。ホームレスの人々のように、所在地がはっきししないため、調査員が把握できないことも理由のひとつだ。調査票を読めないという人もいる。多くは、移民たちだ。単に、忙しいという理由で回答しない人も多い。オーバーカウントの理由の大半は、複数の調査票を受け取ったためといわれる。これらのことが示唆するように、アンダーカウントになる人は、マイノリティや移民、低所得者が大半だ。オーバーカウントは住居が複数ある、つまり家を何件ももっている富裕層に多い。

 では、なぜ、アメリカのNPOは、アンダーカウントやオーバーカウントを問題にするのか。政府の予算が人口統計によって決められる側面が強いからだ。
例えば、2000年の人口統計によれば、母親だけの家庭で生活している子どもは、子ども全体の18.5%だった。しかし、州や地域によっては、かなりの差がみられる。ハリケーン・カトリーナで関心を集めたルイジアナ州では、24.6%にのぼる。同州のなかでも、オーリンズ郡は39.2%、そのなかにあるセントラル・シティは実に58.3%に達する。

 シングル・マザーとその子どもの問題に対する政府の予算は、セントラル・シティのようなところに集中的に配分されるのである。NPOの予算の3分の1は政府からの資金だ。アンダーカウントがあると、これらの予算が適切に配分されないことになる。こうした人々にサービスを提供するNPOとしては、対応すべき問題の数や深刻さに対して、予算が不足することを意味する。

  このため、NPOは、セクターをあげてアンダーカウントの抑制に取り組むことになる。すなわち、アンダーカウントの実態や問題を指摘し、それを抑止するための措置を政府に求めることに加え、抑制のためのアウトリーチを積極的に実施したのである。具体的にいえば、政府、助成財団、NPOがコラボレートして、多様な言語による調査が可能になる体制を作ったり、調査で集めてデータを他の目的に流用しないことを地域社会で説明するセッションをもつなどの活動だ。

 先に述べたように、2000年の人口統計で640万人が未回答だった。また、オーバーカウントからアンダーカウントを引いた実質的な誤差は、1%とみられる。1940年の人口統計の時の5.4%と比べると、大幅に改善されたことになる。NPOの利害もあっての取り組みとはいえ、より正確な統計に近づいていることはたしかである。

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