第4回
NPOの存在意義を示す
ドメスティック・バイオレンスへの対策
毎日、山のように届くメールのひとつに、「非暴力で生きる」セミナーという題名のものがあった。送り主は、尾崎礼子さん。アメリカのオハイオ州で栗に駆る・ソーシャル・ワーカーとして活躍している人だ。以前、都市共生社会研究分野でゲストとしてお招きして、アメリカのドメスティック・バイオレンス(DV)に対する医療機関の役割について話していただいたことがある。
今回のメールは、尾崎さんが11月17日から4回、大阪府茨木市の茨木市立男女共生センターローズWAM(Tel: 072-820-9920)の主催によるDV関係のセミナーの案内が添えてあった。「身近にあるDV、わたしたちにできること」というサブタイトルがつけられたセミナーでは、「加害者ってどんな人」、「被害者を支援するには」、「セーフティ・プランは」、「子どもたちへの影響」というテーマで講演が行われるという。
日本でDVということばが一般に知られるようになったのは、それほど以前のことではない。2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が制定されたのがきっかけだろう。この法律は、2004年に改定され、配偶者に限っていた保護命令の対象を元配偶者に拡大するとともに、被害者と同居する未成年の子への接近禁止命令制度などが設けられた。それまで、夫婦喧嘩として片付けられてきたことが、法律で禁止される暴力行為であり、人権侵害だという認識に変わったのである。
なんらかの行為が法律上の概念になることは、その行為に対して大きな意味をもつ。職場における性的な嫌がらせがセクシュアル・ハラスメントとして定義され、ハラッサーに法的な処罰が加えられるようになると、企業のハラスメント対策が大きく進んだのは、その一例だ。
DVに関していえば、配偶者暴力相談支援センターにおける配偶者からの暴力に関する相談件数が急増している。2002年度には來所や電話を含め、全国で3万5943件であった相談件数は、2004年度には4万9000件を超えた。さらに、2005年度には4−9月期だけで2万6795件と、年間で5万件を上回るペースである。短期間にDVが倍増するとは考えにくい。それまで夫婦喧嘩をしか考えられてこられなかったことが、違法な暴力行為であるDVだという認識が広がったためだろう。
ここでは詳しく説明する余裕はないが、DVを社会的に認知させ、法律を制定させ、被害者の救済システムを作るうえで、女性団体をはじめとしたNPOが大きな役割を演じてきたことは、よく知られている。NPOの存在意義のひとつに、社会的に認知が十分でない問題を積極的に取り上げていく、先駆性がある。DVの対策の進展は、このNPOの先駆性に負うところが少なくない。
私が初めてDVということばに接したのは、約20年前。当時、生活していたロサンゼルスでのことだ。知人の女性がDVの被害を受け、裁判になり、被害者への精神的な支援や証人探しなどの活動をした。家庭という密室での犯罪を立証するのは容易ではない。しかし、被害者のアパートの隣人を証人として出廷させることができたこともあり、有罪判決を勝ち取ることができた。
判決は、単に、加害者を罰しただけではなかった。加害者は、テレビのディレクターだった。裁判官は、加害者に対して、DV防止のための番組を制作し、放映するように求めたのである。制作された番組の内容については、DV問題を扱うNPOがチェックする。こうした判決がでてくる背景には、NPOの存在とNPOへの社会的認知がある。日本でも、いずれこうした時代がくるのではないだろうか。
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