大阪市立大学 共生社会研究会

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 トップページ > よみもの > 12月1日第1号  


NPOや共生社会についての時評を月2回更新でお送りします!


タイトル NPO時評
著者 柏木宏
連載 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回

第5回

NPOと税制
アメリカで新たな動き

 アメリカでは、寄付をした個人や法人が所得税から控除する対象として認められたNPOが2004年に101万余りあった。寄付控除の制度が後押しをして、2004年には2500億ドル(約30兆円)という膨大な寄付がNPOに流入、NPOの活動を支えているといわれる。しかし、寄付控除を利用している人は、意外に少ない。手続きが面倒なためだ。このため、NPOは、寄付を推進するための制度改革を求めてきた。その影響もあり、11月18日、連邦上院本会議は、税金控除法案を可決した。だが、この法案が最終的に成立するかどうかは微妙である。また、NPOのなかも賛成一色ではない。今回は、この動きを紹介したい。

 連邦上院が可決した法案の名称は、Tax Relief Act of 2005。直訳すると、2005年税金控除法案となる。この法案が打ち出した寄付の促進策のなかで最も議論を呼んでいるのは、ノンアイテマイザー(項目別控除を選択しない納税者)への税制優遇だ。現在、NPOに寄付した場合、寄付控除を受けるには、納税申告において、項目別控除を選択しなければならない。しかし、手続きが面倒なため、少額の寄付をした中・低所得者の多くは、これを行っていない。United Way of Americaによれば、全米の納税者のうち7割は、ノンアイテマイザーだという。

 法案では、単身者の場合は年間210ドル以上、夫婦の場合は420ドル以上寄付した場合、ノンアイテマイザーでも税制優遇が受けられるとしている。長年、この制度を求めてきたUnited Way of AmericaやIndependent Sectorなどは、法案の可決を高く評価。しかし、問題を指摘する人もいる。これまでアイテマイザー(項目別控除を選択する納税者)であれば、控除を受けるためにいくら以上寄付をしなければならないという規定はなかった。ところが、今回の法案では、アイテマイザーでも、単身者で210ドル、夫婦で420ドルという下限が設定される。換言すれば、これ以下の金額しか寄付しない人たちは、控除を受けられないということである。

 それだけではない。控除の対象となる寄付は、単身者で210ドル、夫婦で420ドルを超えた額となった。すなわち、これまで、アイテマイザーの単身者は、210ドル寄付をしていれば、210ドルを控除の対象として課税所得から減額することができた。しかし、上院の法案に基づけば、控除はまったくできなくなる。従来のように210ドルの控除を受けるには、210ドル+210ドル=420ドル寄付していなければならない。これでは、少額の寄付をする人たちへの寄付推奨策とはいえない、という批判がでてきても不思議はないだろう。

 上院本会議は、この法案を賛成64票、反対33表で可決した。しかし、下院案には同様の条項がない。このため、上院と下院による合同協議会で調整が行われ、最終的な法案が決まる。冒頭で、この法案が最終的に成立するかどうかは微妙といったのは、そのためだ。現在、連邦議会は、上下両院とも与党の共和党が多数を占めている。「大きな政府」に反対し、民間の役割を強調する立場からいえば、寄付の推進策をより積極的にとるはずだろう。しかし、膨大な財政赤字を抱えていることもあり、容易に判断できない。とはいえ、寄付を促進させ、NPOの財源確保を支援すること抜きに「大きな政府」を否定していけば、結果として残るのは、弱者切捨てになってしまう。今後の動きを注目したい。

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