大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策専攻都市共生社会研究分野

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「行政に必要なNPOの支援と判断能力」

大阪市立大学大学院創造都市研究科
教授 柏木宏

 最近、NPOへの非難の声が強くなってきた。雑誌SAPIO(五月二六日号)の「NPOバルブの闇」と題したセンセーショナルな特集だけではない。読売新聞は、咋年一二月28日に「詐欺まがい・寄付強要 NPOトラブル急増」という見出しの記事を掲載。毎日新聞も、今年二月七日、「過料通知 全国一八四のNPOに」と題する記事とともに、「NPO、中身を見る時代に」という解説文を載せた。
  こうしたなかで、NPOの関係者の間で、NPOの評価や行動の基準作りの動きが広がっている。民間NPO支援センター・将来を展望する会による「信頼されるNPOの七つの条件」(以下、七つの条件)や国際協力NGOセンターの「NGOのアカウンタビリティー」(以下、アカウンタビリティー)などが、それだ。これらのガイドラインの柱のひとつが、NPOによる市民への積極的な情報公開である。
  元々、NPO法の成立をめざした人々は、行政の監督を最小限にし、自由な活動を認めるよう求めた。代わりに、NPOが事業や財政面で自己評価を行い、結果を市民に公開すると主張。また、公開された情報により、市民が支援するNPOを選択できるとした。この考え方を基本に、法律が作られ、所轄庁への報告書の提出と提出された書類の開示が行われるようになった。
  しかし、NPO評価や所轄庁への報告書の提出は、期待された結果を生み出していない。また、NPOの多くは、報告書の作成で、負担の大きさとともに、所轄庁の支援の不十分さを指摘している。「情報公開はNPOの命」というNPO関係者の指摘をどう考えるべきか。以下、筆者が実施した調査の結果も踏まえ、検討してみたい。

 

NPO評価の役割と限界

NPOの本場、アメリカのNPO評価の試みは、全米慈善情報局(NCIB)の設立から始まった。第一次世界大戦の頃のことだ。NPOへの寄付が本格化していくなかで、適切な寄付先を判断したいという声の高まりを受け、独自の評価基準を策定し、NPOの評価活動を行ってきた。
数年前、NCIBは、良き企業局(BBB)と合併。現在、BBBは、大手のNPO約六〇〇団体について、公的信頼性、寄付金の使途と募金方法、管理運営などについて調査を行い、結果を公表している。前述の「七つの条件」や「アカウンタビリティー」には、同様の評価基準がみられる。
こうしたNPO評価が寄付者の行動に影響を与えているのだろうか。たしかに、評価をみて、寄付先を決めたり、変更する例はあるという。しかし、圧倒的多数の寄付者は、こうした第三者評価に依存せず、寄付先を決めている。
なぜか。理由は大別して三つ考えられる。第一は、BBBなどの認知度が低いこと。第二は、評価の対象が極めて少なく、考慮した寄付先の大半の情報がないこと。第三は、寄付先を決定する要因は、知り合いからの依頼などパーソナルな関係に基づくという現実があるためだ。
  評価基準の問題もある。例えば、BBBなどは、財源の多様性を基準のひとつにあげている。一般的には、財源が多様であれば、特定の財源から自立し、主体的な活動が可能である。しかし、財源が多様な組織が常に適切な寄付先とは限らない。寄付者は、自らの基準で寄付先を決めるべきで、NPOは自らのミッションに基づき寄付者の開拓を行うべきである。

 

所轄庁への報告に対するNPOの意識

NPOは、毎事業年度初めの三ヵ月以内に所轄庁に書類の提出が求められている。事業報告書、財産目録、貸借対照表、収支計算書といった組織の状況や事業実績を示すものがひとつ。もうひとつは、役員名簿や記載事項に変更があった場合の定款などの事務的な書類である。
  今年二月、筆者は、大阪府と兵庫県で認証された合計一一六七のNPO法人を対象に所轄庁への報告義務に関する調査を行った。報告義務に対するNPOの意識と問題を探るためだ。回答は、五四七法人からあり、回答率は三二%。
調査結果によると、所轄庁への書類提出の意義については、「大変重要」が九%、「重要」が四五%となった。だが、書類の作成の付加が「非常に大きい」と回答したNPOは二四%、「大きい」も五〇%を占めた。
  ここから、NPO全体では、書類提出は重要だが、負荷が大きいとみなしていることがわかる。なお、年間予算三〇〇万円未満の小規模なNPOに限定すると、書類提出が「あまり重要でない」が三二%、「不必要」が一四%にのぼる。反面、負荷が「非常に大きい」という答えが二九%に達する。
  所轄庁への書類提出が市民への説明責任になるかという点についても、同様の傾向がみられる。調査全体では、説明責任をはたす手段という考えに、三%が「強く賛同」、五〇%が「賛同」と回答。しかし、年間予算が三〇〇万円のNPOでは、「賛同」が四四%にすぎない。「あまり賛同できない」が三〇%に及んだ。

 

NPOからみた行政の評価

二〇〇〇年一二月に内閣府が実施した自治体から見た市民活動団体の評価に関する調査によると、市民活動団体がコミュニティの再生と維持に「おおいに貢献している」と考えている自治体は、二三・四%にのぼった。「まあまあ貢献している」も五一・三%を占め、「あまり貢献していない」は一・七%にすぎない。
  この調査は、自治体の認識を示すものだが、いまや行政がすべての公益的な活動を行うという時代ではない。市民活動団体、NPOの役割を無視するわけにはいかないのである。であるならば、NPOの育成を社会として積極的に行うべきだ。
しかし、行政の支援は十分ではない。少なくとも、報告義務との関係で大半のNPOは、そう認識している。筆者の調査では、所轄庁がNPOの書類作成の援助をしているかという問いに対して、「していない」が三九%を占めた。特に大阪府に対しては、四一%のNPOが「していない」という。
NPOの育成支援は、書類の作成だけではない。アメリカでは、税制優遇措置をもつNPOでも、年間予算二万五〇〇〇ドル未満であれば、税務当局への報告義務が免除される。筆者の調査では、年間予算三〇〇万円未満のNPOの五一%がこの制度を「非常によい」と回答している。事実上、税制優遇のない日本のNPOの立ち上げ時期には、こうした特例を認めるべきだ。

NPO評価が議論され始めた背景には、公益的な事業を行うNPOが拡大するなかで、「適切な受け皿」を探したいという資金提供者である行政の希望があった。しかし、どのNPOが適切かは、提供する資金と一体となる事業の性格や内容と不可分のものである。日本に三ツ星の行政が存在するかという問いに対して、NPOの視点に立てば、行政は適切なNPOを見極める能力をもつべきだ、と答えることになろう。


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