◇どんな社会生むのか
過去10年、大阪府は財政再建を何とかやろうとはしたが本気になっていなかった。橋下徹知事の登場によって府民を巻き込んだ議論が起き、「このままではえらいことになる」という認識を府民が共有したことは評価する。
しかし、財政再建プログラム試案にはかなり問題がある。まず、なぜこれだけ財政が悪化したのか原因究明されていない。原因を明確にし、それにメスを入れた改革でなければ同じことを繰り返すことにならないか。
将来ビジョンもない。改革した後、どういう社会が生まれるのか。何から何まで削減した先はどうなっているのか。もちろん知事は「教育日本一」というような漠然としたことは言っているが、それなら35人学級廃止と「教育日本一」はどこでどう結びつくのか、府民には分からない。
さらに、増収策がない。話を単純化すると5兆円の借金に年間1100億円の削減で、返済に50年はかかる気の遠くなる話になる。
もう一つ、セーフティーネットに対する配慮が欠けている。要請を聞いていたらきりがない面はあるし、例えば所得に応じた段階的な補助に切り替えるという施策はあり得るだろう。しかし削減だけが先行し削減分をどう埋めるか、セーフティーネットを支える仕組みをどう構築するかが見えない。穴埋めをボーンと非営利組織(NPO)やボランティアに投げられても困る。
例えば、子育て支援を重視しているのに、母子家庭を切り捨てていいのかという問題がある。NPOとともに託児所を工夫して設けて母親たちが働きやすい環境をつくるとか、支援を薄くした分を別のところで補うことが必要ではないか。【構成・岩崎誠】
■メモ
◇福祉の削減 府の財
政再建プログラム試案は、福祉も聖域としない。高齢者、障害者、乳幼児、ひとり親家庭への医療費助成を13億円削減し、月2500円上限で自己負担1割とする。障害者の就労支援関係事業(2億9400万円)は09年度に廃止して類似の国庫補助事業に集約し、在宅子育て家庭向けに園庭開放などする民間保育所に対する補助(4億6400万円)を廃止するなどあらゆる分野に及び、各方面から反発の声が上がっている。
■人物略歴
◇かしわぎ・ひろし
77年同志社大文卒。渡米し日米のNPOの交流促進事業に従事。03年4月から現職。54歳。
毎日新聞 2008年5月24日 大阪朝刊

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