第1セッションー森屋裕子氏から
NPO法人フィフティネットの目的は、政治・政策を決定する場へ女性を送り出すことにある。それは「半分(フィフティ)いるのが当たり前だから」であるばかりではなく、ジェンダーフリーの視点を政治・政策に持ち込み、生きやすい社会にするために必要不可欠な条件だからである。フィフティネットによって開催されるバックアップスクールでは、ジェンダーフリーについての政策や、議会・選挙のノウハウやなどについて学ぶことが出来る。スクール出身者や先輩議員などとネットワークを形成することも重要であると考えている。
なぜ女性なのか、性別の枠を越えた個々人の資質や考え方を問題にするべきではないのか、という意見があることは承知の上で、森屋氏は言う。政策コンサルタントとしての自身の経験を通して、政策の意思決定の場に女性があまりにも少ないことや、男女共同参画について理解し行動している人の少なさに問題意識を持ったこと。意思決定の過程において議員の役割は非常に重要であり、議会の構成を変革していく必要性を感じたこと。そういった気づきを通して、男女共同参画に対する議会の不十分な状況を改善するために、自分たちで女性の議員を議会へ送り出していこうという答えに到った、のだと。
以下、WSにおける森屋氏の論点を列挙する。
女性の政治参画に関して。世界的にも女性議員の活動が活発化しているが、日本は世界と比して、その遅れぶりが顕著である。主要先進国8か国中では最下位であり、世界女性国会議員比率ランキングにおいては189カ国中126位という状況である。韓国は日本と同様に女性議員の比率が低迷していたが、割り当て制度の成立によって改善の兆しを見せている。女性議員を増やすための手法として、選挙制度を工夫することは日本としても参考になるのではないだろうか。
「女性を議会へ送り出す」というフレーズの中で注意すべき点について。数は大切である。しかし、単に数を増やせば良いという問題でもない。「議会へ送り出す」目的はあくまで、議会の政策課題としてジェンダーフリーの話題を組み入れることであり、それは女性議員が増えることと同義ではない。議員の意識が重要なのである。
男女共同参画政策を進める上で、様々な意思決定が行われる際に女性の参加を促すことが大事であるが、まだまだ不十分な点が多い。
経済の観点からは、雇用の基準を設定することや労働環境を整備するなどの具体的措置をとることが出来るが、政治に関しては手法が抽象的にならざるを得ない。政治に参画するかどうかは個人の選択に寄与するところが大きく、政治参画について政策として出来ることは、意識の啓発活動などに限られる。行政における政策には限界があり、政治参画の具体化のためには、市民活動のあり方にその成否がかかっている。どういった社会をつくりたいのか、当然のことだが、個々の女性により、意見が異なるわけであり、単に議員を送り出すだけではなく、政策も出していこうという機運の高まりを逃してはならない。
「女性の参画」を目指す市民活動として、何が出来るか。市民と行政がパートナーシップを保ちながら、社会的課題解決を目指さなければならないということは、現代社会においてもはや常識ともいえる視点であろう。そのための手段としてロビー活動や政策提言を行うことが重要である。提言するだけではなく、女性議員を出すための活動も欠かせない。女性議員を議会へ送り出すためには、女性議員が生まれることによって何がどう変わるのか、政策の具体像を示すことが必要である。
第2セッションー質疑応答
Q.組織規模について
A.組織の規模としてはとても小さく、日常的なスタッフは7名程度。ただ「女性と政治キャンペーン」に関しては全国規模で行っている。バックアップスクールを始めた当初、全国から同様の組織を立ち上げたいとの問い合わせが相次ぎ、日本各地にバックアップスクールが出来た。それが現在のネットワーク形成に繋がっている。ただ、組織維持が困難であるため、現在は全国に5団体程度残っている状況である。
Q.いわゆるバックラッシュ団体について
A.ジェンダーフリーの理念は90年代に盛り上がりを見せたが、今世紀に入りバッシングされる傾向にある。いわゆるバックラッシュ団体が出現している。バックラッシュ団体は自らを「真の共同参画」を実現する組織と称し、ジェンダーフリーの考えでは本来の女性が政治に向かわないという考え方を持っている。そのような団体の思想の根本には性別役割分業体制を支持する考えが見て取れる。
Q.日本の社会に男女共同参画が進まない根本的な原因は何だと考えるか?
A.日本では性別役割分業体制を容認する人がまだまだ多いことが挙げられる。政治は男性の仕事であり、女性の参画は望ましくないと考える層が、男女共同参画政策の進展を遅らせているのではないか。
第3セッションー院生の意見や感想
今回のWSでは、院生の興味が、ほぼ2つの点に集中した。
1つは、性別役割分業ということ。性別役割について考察することは、ジェンダーフリーに関する意見を表明することと重なる部分が、当然ながらある。そしてもう1つは、NPOと政治との関係について、である。
まず、性別役割分業について。
・「男性はこうであるべき、女性はこうであるべき」という分け方には反対である。しかし、制度的にも、文化的にもまだまだその状況を脱するには十分ではなく、前回のWS同様、制度と意識を同時に変革していかなければ、理想と現実のギャップはなかなか埋められないだろうと感じた。
・育児休暇などは制度として保障されてはいるが、現実問題として男性が取得することは困難であると聞く。育児休暇を実際に利用するか、否かは、その本人や家族を取り巻く周囲の環境が大きく影響すると思う。少なくない人々の意識の根底には、子育ては女性がするものという固定概念が根強く残っているのではないか。生むことは女性にしか出来ないことではある。しかし、そのことは理解した上で、男女に違いはないと意識することが必要なのではないか?
・性別としての役割は否定してはいけない部分もあるだろうし、固執しすぎてもいけない部分もあるだろう。その境目は千差万別だと思う。何をもって男女平等とするのか、は非常に難しい問題であると思う。
次に、NPOと政治に関して。
・NPO法では主要な目的として政治活動をしてはいけないことになっている。しかし、この政治活動には広義と狭義のそれがあり、その線引きは難しいのが実情である。例えば、特定の候補者を支持することは禁止されているが、特定の問題に対して介入していくことは微妙なところ、グレーゾーンであるのが悩ましいところである。
・フィフティネットの活動は、ジェンダーの枠にとらわれない新しい社会の仕組みを創り出すことを目的としており、政治に関連している。しかし、政治活動ではないというのが、NPO法人として存在できるポイントになっている。そういう点に興味を持った。
・日本のNPO法は政治活動をする分野と、社会的サービスを行う分野を明確に区別していない。そこのところが制度的には不十分なのだと、当大学院での「NPOと政治」という講義で学んだ。アメリカの制度を参考にして、より改善していく必要があると、改めて今回感じた。
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