大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策専攻都市共生社会研究分野

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2007年度 都市共生社会研究分野 第6回 ワークショップ

障害者支援における行政の役割〜知的障害者を中心に〜

社会福祉法人 大阪知的障害者育成会 小尾 隆一氏
2007年5月29日

第1セッションー小尾隆一氏から

 今回の共生分野ワークショップにおいて小尾隆一氏が話された内容は、次の2点に集約されよう。まず、平成18年から施行された障害者自立支援法について。そして、障害者支援に関してわれわれが直面している課題について、である。以下において、小尾氏から語られた内容を記すことにする。
 はじめに、障害者自立支援法について。
障害の種類(身体障害・知的障害・精神障害)に関わらず障害者自身の自立支援を目的とした共通のサービスを提供する、と謳っている。しかし、障害者支援の現場ではこの変化についていけていない、というのが現状である。
自立のために不可欠な就労支援については、働く意欲と能力のある障害者が企業等で働けるように、福祉の側からも支援してゆかねばならない。また、障害者が身近な地域で必要なサービスが受けることが出来るように、さまざまな規制緩和が行われている。規制緩和によって、サービス提供主体は社会福祉法人のみならず、NPOでも株式会社でも可能であり、空き教室や空き店舗の活用もできるようになった。
利用に関する手続きや基準を一定にし、透明化、明確化する。費用の負担に関しては、従来とは違い、サービスを利用する個人が受け取った利益の量に応じて負担する(1割の応益負担)ということになった。
続いて、障害者支援に関する課題として小尾氏があげたのが、次の4点である。

1.われわれの社会は誰を障害者として認定するのか。
知的障害者として社会的に認定されていない障害者が存在する。例えば、軽度障害者や発達障害(ADHD、アスペルガー、高機能自閉症など)者はサービス対象外におかれていることが多く、全体的に整理されていないのが現状である。

2.われわれの社会はどの程度のサービスを用意するのか。
障害者自立支援法において数値目標がたてられたが、実証性と実効性については未知数である。知的障害者のホームヘルパーが1人もいないという自治体が3分の1も存在する。行動援護などの新しいサービスも提供する事業者が少ない。そういった分野の人材養成が急務の課題である。

3.われわれの社会はその費用の分担をどうするのか。
国際的にも予算総額そのものが低い、という日本の現状をふまえて、障害者の所得保障に関する検討が必要である。就労支援が中心になるだろうが、他にも、減免・年金・手当等の措置が考えられるべきである。しかしこれらが万全の策ではない。これらの措置に関する問題点は以下のように言えるだろう。まず、減免については、収入が少ない人には効果がうすい、ということ。次に、障害年金は老齢年金と同額であり、高齢社会の中での増額は難しいこと。そして、手当は対象枠が非常に狭いことである。

4.われわれの対応は国際社会とどのように調整をはかっていくのか。
2006年12月13日に日本が批准した障害者権利条約を考慮しながら、教育・雇用・住宅等の法整備がなされなくてはならない。措置ではなく契約によるサービス利用を進めていくという観点からは、成年後見制度の利用が望まれる。しかし現在の成年後見制度は、認知症等による財産管理に関する事業がほとんどであり、身上監護のできる人や事業者が少ない、ということも指摘しておきたい。

第2セッションー質疑応答

Q 小尾さん自身は障害者自立支援法をどのように考えているのか?
A 支援費制度の財政破綻という状況を受けて、厚生労働省のスーパーエリート官僚がそれまでの流れを無視して、短期間で作り上げたものだと考えている。サービス提供主体の市町村一元化、利用者(応益)負担などで自治体や施設、障害者本人が悲鳴を上げている。利用者は利用を控えるようになり、施設は人員削減をすすめざるをえない。追加施策を継ぎ足して、横足して、なんとかやっているのが現状である。しかし、当の法律を作ったエリート官僚は、配置換え等によって、関わりをもってはいない。現場の自治体の担当者は分からないことだらけである。

Q 障害者自立支援法が見直される方向はあるのか?
A 今年から見直し作業を行っていかないと間に合わないだろう。発達障害なども含めた総合的な制度が必要であるし、定率負担についても所得保障なしでは行えるものではない。介護保険も含めた財源の確保が最大の焦点になっていくであろう。

第3セッションー院生の意見や感想

・(精神障害者の生活支援をしている自分の立場から考えて)従来、障害者の自立とは何かということを考える際に、まずあげられていたのが自己選択、自己決定であった。が、障害者自立支援法では経済的な意味が大きく含まれてしまった。国が法律で一方的な価値観を押し付けてくることになったと思う。これはやはり憂うべきことだと感じる。
・障害者自立支援法による現場での状況や混乱が、小尾氏やクラスメートからの語りから理解できた。この法律が悪法であるのかどうか、そしてまた、法の理念と実際の現場で表面化してきた矛盾や問題について、はっきりと位置づけるのは現時点では難しいように思う。福祉社会の考え方や仕組みが変化していく中で、どのようにこの法律を位置づけ、批判、評価していくか、この混乱は決して法律の複雑さからだけではなく、理念の位置づけと方向の定まらないことによるのではないかとも思う。
・障害者自立支援法の施行後に、収入の激減のため資金的に立ちゆかなくなったNPOや施設があるという話があったのだが、このことについてはもう少し具体的な話を聞きたく思った。規制緩和という流れの中で、NPO等が福祉への関わりを深めていきつつも、当のNPOが立ちゆかなくなっていくという現実は何を意味しているのか。これからのNPOの運営、マネジメントを考える上で知っておくのが必要ではないだろうか。
・障害者の自立ということについて、自分なりに考えざるをえないと感じた。自立ということを経済的自立のみに限定して考える弊害はすでに批判されている。必要なサービスを受けることができずに新しく排除されていく人々のことを考えると大きな問題である。その了解の上で、どのような姿を人の自立として捉えるかということを考えていく必要があるだろう。
・刑務所に収監されている人の中に、知的な障害を持つ人が多数いて、社会に気づかれず、援助もないままでいる、というお話があった。先日、NHKでもこの累犯障害者の問題を放映していた。小尾さんによると、この問題がクローズアップされたきっかけが、実刑判決を受け服役した元民主党の議員が実態を知ったからであったという話には、かなり驚いた。なぜ「たまたま」遭遇した元議員によって告発されるまで、社会で知られることがなかったのか。そんなことは実は福祉関係者には知れ渡っていて、元議員によって大きくマスコミに流れて、はじめて多くの人の知るところとなっただけなのか。そのあたりはわからないが、小尾さんは「社会の暗部にあって実数がわからない」という意味のことをおっしゃった。知的障害という判別しづらい特殊性もあるだろうが、司法の中で暗部であり続けている今の日本社会の構造を、問題視すべきだと思う。


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