今回の共生分野ワークショップにおいて小尾隆一氏が話された内容は、次の2点に集約されよう。まず、平成18年から施行された障害者自立支援法について。そして、障害者支援に関してわれわれが直面している課題について、である。以下において、小尾氏から語られた内容を記すことにする。
はじめに、障害者自立支援法について。
障害の種類(身体障害・知的障害・精神障害)に関わらず障害者自身の自立支援を目的とした共通のサービスを提供する、と謳っている。しかし、障害者支援の現場ではこの変化についていけていない、というのが現状である。
自立のために不可欠な就労支援については、働く意欲と能力のある障害者が企業等で働けるように、福祉の側からも支援してゆかねばならない。また、障害者が身近な地域で必要なサービスが受けることが出来るように、さまざまな規制緩和が行われている。規制緩和によって、サービス提供主体は社会福祉法人のみならず、NPOでも株式会社でも可能であり、空き教室や空き店舗の活用もできるようになった。
利用に関する手続きや基準を一定にし、透明化、明確化する。費用の負担に関しては、従来とは違い、サービスを利用する個人が受け取った利益の量に応じて負担する(1割の応益負担)ということになった。
続いて、障害者支援に関する課題として小尾氏があげたのが、次の4点である。
1.われわれの社会は誰を障害者として認定するのか。
知的障害者として社会的に認定されていない障害者が存在する。例えば、軽度障害者や発達障害(ADHD、アスペルガー、高機能自閉症など)者はサービス対象外におかれていることが多く、全体的に整理されていないのが現状である。
2.われわれの社会はどの程度のサービスを用意するのか。
障害者自立支援法において数値目標がたてられたが、実証性と実効性については未知数である。知的障害者のホームヘルパーが1人もいないという自治体が3分の1も存在する。行動援護などの新しいサービスも提供する事業者が少ない。そういった分野の人材養成が急務の課題である。
3.われわれの社会はその費用の分担をどうするのか。
国際的にも予算総額そのものが低い、という日本の現状をふまえて、障害者の所得保障に関する検討が必要である。就労支援が中心になるだろうが、他にも、減免・年金・手当等の措置が考えられるべきである。しかしこれらが万全の策ではない。これらの措置に関する問題点は以下のように言えるだろう。まず、減免については、収入が少ない人には効果がうすい、ということ。次に、障害年金は老齢年金と同額であり、高齢社会の中での増額は難しいこと。そして、手当は対象枠が非常に狭いことである。
4.われわれの対応は国際社会とどのように調整をはかっていくのか。
2006年12月13日に日本が批准した障害者権利条約を考慮しながら、教育・雇用・住宅等の法整備がなされなくてはならない。措置ではなく契約によるサービス利用を進めていくという観点からは、成年後見制度の利用が望まれる。しかし現在の成年後見制度は、認知症等による財産管理に関する事業がほとんどであり、身上監護のできる人や事業者が少ない、ということも指摘しておきたい。
Q 小尾さん自身は障害者自立支援法をどのように考えているのか?
A 支援費制度の財政破綻という状況を受けて、厚生労働省のスーパーエリート官僚がそれまでの流れを無視して、短期間で作り上げたものだと考えている。サービス提供主体の市町村一元化、利用者(応益)負担などで自治体や施設、障害者本人が悲鳴を上げている。利用者は利用を控えるようになり、施設は人員削減をすすめざるをえない。追加施策を継ぎ足して、横足して、なんとかやっているのが現状である。しかし、当の法律を作ったエリート官僚は、配置換え等によって、関わりをもってはいない。現場の自治体の担当者は分からないことだらけである。
Q 障害者自立支援法が見直される方向はあるのか?
A 今年から見直し作業を行っていかないと間に合わないだろう。発達障害なども含めた総合的な制度が必要であるし、定率負担についても所得保障なしでは行えるものではない。介護保険も含めた財源の確保が最大の焦点になっていくであろう。