大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策専攻都市共生社会研究分野

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2007年度 都市共生社会研究分野 第7回 ワークショップ

NPOによるホームレス支援とNPO

釜ヶ崎資料センター・松繁逸夫
2007年6月5日

第1セッションー松繁逸夫氏から

松繁逸夫氏を迎えてのワークショップは、今回のテーマに関連する3つのNPOをあげ、その名称からそれぞれの活動を推論してみようという、受講生への問いかけから始まった。NPOと、松繁氏解説による活動内容は、以下のとおりである。

1.「NPO法人釜ヶ崎支援機構」が行っている活動について。
 野宿生活者を路上死させないための全般的な支援活動を行い、より具体的には行政に仕事に関する要求をだすことに重きをおいている。予算はおよそ9億円。そのうち、7億円ほどが就労支援に費やされている。例えば、1日、5千700円の日当を稼ぐために(しかもそれは1か月で数回の機会しかないことが多い)野宿生活者たちは、多少身体的に辛い状態であっても、たいてい無理をして仕事を行う。松繁氏の言葉を借りれば「死に近い人」が機構に訪れるため、医療相談や生活相談、安定した仕事への無料職業相談などが重要な活動であるといえる。また、野宿生活者の公園等公共空間からの追い立てについての意見は、実にさまざまである、という前提のもとで、松繁氏は次のように言う。都市の中の機能としての公園は尊重すべきだし、ルールは守るべきである、公園にいる野宿生活者は地域住民には邪魔な存在なのである、と。地域住民は野宿者を追い払いたいと思っているが、その後の野宿者の面倒は支援者にみて欲しいとも思っている。松繁氏自身、指定居住地を作ることを厚労省に提言したことがあり、それが公園仮設というかたちになってあらわれたことがあると話す。松繁氏がそのような形態を希望していたわけではないが、公園仮設のようなものでない施設を作るべきだと思う、と語った。

2.「NPO法人まちづくり今宮」について。
 具体的な活動については、子どもたちのための通学路環境マップ作り、子ども討論会、月1回の町内清掃活動、近隣どうしで挨拶したりや声をかけあう運動、盆踊りの復活、玩具や古着の交換会などがあげられる。

3.「ホームレス支援全国ネットワーク」(2007年6月9日 東京で設立)について。
 ネットワークをつくり、ホームレス支援活動組織間の交流を通じて、質の良い支援を構築していきたい。現在、地域に住む住民でも、町内会に入るのが6割を切っているという状況がある。特に若い人たちは町内会には加入せず、町内活動にも出てこない。これは憂慮すべきことなのだが、しかしまた一方で、町内会活動に参加しない回数がある一定の割合を超えると「非国民」というレッテルを貼られてしまうこともある。そうなってしまうと、まさに「地域ファシズム」と言ってもよいものである。このあたりのむつかしさは常に考えられなければならない。

第2セッションー質疑応答

Q 支援機構を利用する人がどれほどいるのか。
A (国が207年1月に実施した全国調査によって明らかにされた野宿者の数)1万8
千人の内の2割ほどである。55歳以上くらいの年齢層の人に、今の社会の中に再び参入しなさいというのは酷な部分もあると考えている。また、中高年には仕事がない。あっても警備とか清掃の仕事だ。それなら、アルミ缶を集めても、食べるだけなら何とかなる。知らない所で働くより安定がある、と彼らは考えるのだ。2ヶ月くらい働いてから、そして首を切られるくらいなら今のままの方が良い、ということになる。また特に、戦争体験者に多いようなのだが、自分が悪いからこんな暮らしをしなければならない、という自己責任論を示す傾向がある。同時にまた、自分の身一つで野宿しているだけで、だれにも迷惑をかけていないという意識も強い。社会の世話にはなりたくないとする60代後半の人は多いのである。そのような人たちは生活環境から識字率が低く、転職を繰り返すことが多いようだ。日本では、転職がプラスであると考えられていない。転職を契機にして生活環境悪化を招く傾向が強い。結婚している率も半分に満たない。社会の構造変化が起きるときに、そこからこぼれ落ちる人たちが野宿生活者になるのだと思う。現在、よく語られているフリーターやニート(NEET―Not in Employment,Education or Training)は「新日雇い」とでも呼ぶべき集団であり将来の野宿者予備軍である、と考えている。

Q 国はどのようにすればよいのか。
A 地球温暖化によって海岸線の生活が維持できないということは、かなり以前から言われている。個人的には、生活の場を山(農地)に戻さなければ人間本来の生活の場はなくなるのではないかと思う。しかし、いったん人工的に加工された自然は何も生まない。日本列島で生活するために、われわれは何に金をかけるべきなのか。例えば大阪では、雇用創出基金に基づいて各区に雇用を促進させる施策をとっているが、コンサルタント業界に任せきりで、うまくいっていない。政治にも企業にも道徳性がない。個人の特性を実体化するには政治に頼るしかないのだが。

Q 野宿者の数は減っているが、長期化する人が増えているという。ホームレスの問題は解決されたのだと多くの人は考えているのだろうか。
A 世間の関心はニート対策に向けられていて、現在のホームレスについての問題解決は難しいままである。ホームレスの新規流入は止まっていない。このまま彼らを路上死させてよいのか。地域福祉の対象者として、ホームレスの人々は含まれているはずである。そして実際にそれを支えているのは民間の支援団体であるなら、もっと支援してもよいのではないか。「新日雇い」に対しどんな未来を保障するのか。そのような人々が路上で生活するような状態をつくっていっても良いのだろうか。

Q 農業に産業構造を転化させるという構想はどうであろうか。
A 住む所と仕事は提供する、うまくいけば定着して欲しいという自治体はあるにはある。しかし、そのような自治体も結局のところ若い人たち、あわよくば子どもを生んでくれるような人たちを求めているのであって、(将来的に介護等で)村でお世話をしなければならない人は困る、というのが本当のところだろう。

第3セッションー院生からの意見・感想

・松繁さんが受講者への質問からWSを開始されたのは、受講者の問題意識と熱意を探られたのであろう。講義は言葉を選び、自分の考えを直接的に出さず説明しようとされたように感じた。「支援者と地域住民」、「野宿者と支援者」、「支援者と支援者」という対立の図式があり、複雑な状態にあることが理解できた。
・まちづくりや町内会について話される中で、地域での清掃・盆踊りのような行事をすすめることが、「地域ファシズム」につながっていく可能性がある、という指摘がなされたと思う。当たり前のことだと思っていたそのような行事について、単純ではないとらえ方をする人びとと暮らしているのだということに、はっとさせられた。人と協働すること、人を支援すること、されること、の難しさ、複雑さを感じさせられた。
・青テントのままでいい、シェルターや支援センターには行きたくない、という人たちの話を聞き、ひとにとっての自立とはどういうものなのか、考えた。


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