大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策専攻都市共生社会研究分野

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2007年度 都市共生社会研究分野 第9回 ワークショップ

外国人労働者の実態とその支援活動―働く仲間、外国人労働者―

全統一労働組合 鳥井一平氏
2007年6月19日

第1セッションー鳥井一平氏から

鳥井氏のプレゼンテーションは、外国人労働者の現況、全統一労働組合のあらまし、外国人研修生・技能実習制度の実態と問題点、等を中心に展開された。以下において、それぞれの要点を記すことにする。

 まず、外国人労働者の状況について。
 現在、日本における外国人登録者数は200万人を超えている。いわゆるオールドカマーと、80年代以降に移住してきたニューカマーである。そのうちニューカマーと呼ばれる人々を労働という観点から見ると、1.就労できる在留資格をもっている労働者 2.日系労働者(主にブラジルとペルーからやってきた人々) 3.資格外労働者(オーバーステイ) C技能研修生、技能実習生 D労働者でない働き手(研修生、メイド、エンターテイナー)等に分けられる。多くの外国人労働者がいるという現実にもかかわらず、首都圏を中心に警察官が駅付近などで職務質問を行い、徹底した外国人労働者の狩り込みを行っているという事実も報告されている。

 続いて、全統一労働組合について。
 全統一労働組合は「神奈川シテイユニオン」「全国一般東京南部」「外国人分会」に分かれている。1993年3月8日、生活と権利のための外国人労働者1日行動を実施し、「外国人春闘」をスタートさせた。闘いの基本は、労働基準法第3条「『社会的身分』を理由として賃金、労働時間、そのほかの労働条件について差別的扱いをしてはならない」である。
 全統一労働組合の役割は3つあると考えている。その3つとは、1.労働力を安売りさせない 2.労働力をモノ扱いさせない 3.社会の公共性を防衛する。
 全統一労働組合が掲げるキーワードは次の3点。それは、1.違いを尊重しあおう 2.ひとりじゃない 3.できることから始めよう。 
 全統一労働組合は常に外国人労働者からのさまざまな相談を受けている。具体的には、賃金未払い、労災、解雇、税金の還付請求等である。

 最後に外国人研修生・技能実習制度について。
 この制度は1993年に創設され、研修生・実習生は労働基準法上の「労働者」に該当する。制度上では、開発途上国の人材育成や単純反復作業のみによって習得できるものではない内容を学習することになっている。
 その後、受け入れ要件の規制緩和が進み、研修生の新規入国者数は年々増加する。(1991年43,649人、2005年83,319人) 研修生の国籍は圧倒的に中国が多い。(2005年、全外国人労働者の67%) JITCO(国際研修協力機構)によって支援されている。技能実習移行対象職種は62種類、114作業である。
 受け入れ先の日本企業は、実習生達を労働力として使っているのは明らかである。市場原理が働いているらしく、その賃金は年々減少している。国の政策の影響や個人の補助金の減少もあり、農業分野への受け入れが拡大してきている。事業所・使用者にとって都合のいいようにこの制度が利用されている。
 2005年頃から受け入れを拡大する論議が一気に高まっており、期間も3年から5年への延長が画策されている。研修という形態は、人口減少化における雇用対策として、外国人を定住させずに、彼らの労働力のみを利用していくには、一番適しているといえる。人権侵害、パスポートの取上げ、最低賃金並みの低賃金、長時間残業、「保証金制度」による人身売買的な送り出しなど、近代の労働契約の基本原理に反して、働く人間の人格にまで干渉する制度であるといえよう。まさに労働基準法が崩壊の危機に瀕している。

 プレゼンテーションの最後に鳥井氏は、雇用対策法の改「正」について、補充説明を行った。雇用対策法改「正」によって、外国人労働者は届け出を行い、外国人であることを確認することが義務化された。しかし(外国人であるという)確認方法については、厚生労働省の役人曰く「見た目ですかねえ」ということである。これでは戦前の警察が地域で働く労働者の名簿を持っていたことと同じである。審議会で改「正」内容について意見を出したのが使用者側委員であって、労働者側委員からは発言がなかった。労働組合がことの重大さに気がつかないことこそ、問題にしなければならない。今後推進されるべき「多民族・多文化共生社会」の大きな弊害になるだろう。

第2セッションー質疑応答

Q.根源的な疑問なのだが、労働組合がどうしてこんなに弱くなってしまったのか。
A.労使対等についてしっかり認識していないことが背景にある。日本の多くの組合は事業内組合で、自分たちの企業を守ることのみを組合の役割だと考えている。また、組合自体が「単一民族論」に立っていることが多く、外国人労働者のことになると権利主張しなくなる。

Q.なぜ、協同組合が仲立ちするのか。
A.企業・事業所への受け入れは、1次受け入れ機関を通さなくてはならない。1次受け入れ機関は企業・事業所から管理費(1人当たり3〜5万円)を徴収(実質的なピンハネ)するので儲かる。協同組合はこの1次受け入れ機関に当たり、次々に受け入れ機関が作られることになる。ピンハネということで暴力団も暗躍しているのではないかと思われるが、暴力団はほとんど食い込んでいない。やはり、国の制度なので入りにくいと考えられる。

Q.研修制度と技能実習制度の違い、研修生から実習生への移行について教えて欲しい。
A.研修は1年間、技能実習は2年間受けられ、合計3年間受けられる。研修生には賃金が支払われず、技能実習生には賃金が支払われる。

Q.岐阜に協同組合が集中しているのはなぜなのか。
A.2つの理由がある。繊維産業、縫製業の拠点であること。もう一つは日中友好の拠点であることで、中国からの受け入れ人数が圧倒的に多い。

Q.「人身売買」という言葉にショックを受けた。アメリカからも指摘(米国務省2007年版「人身売買報告書」)を受けている。こうした施策を進めるのは日本の国民性か。
A.外国人が従事していれば、労働に当たるかなど瑣末的なことを延々と論議する。また、マスコミも動員して「(外国人労働者の需要は)待ったなしの状況」とか「(外国人労働者受け入れを難しくすることで)中小企業をつぶすのか」といった受け入れ側の都合のよいキャンペーンをはり、世論をミスリードする。

Q.首都圏を中心に警察官が駅付近などで職務質問を行い、徹底した狩り込みを行っている事実は、うがって考えると外国人労働者の供給に一役かっているのではないか。
A.それはないと考える。むしろ、外国人労働者の犯罪が増加し取り締まる必要があるという印象を与えたり、外国人がうろうろすると困るという気運をつくりだす役割を果たしている。

Q.日本へ研修・実習で出かけ、3年間働けば200万〜300万儲かるなどのことがまことしやかに宣伝されている。日本へ来てみたら、低賃金で長時間働かされる。逃げることもできない。どうすれば現状を改善できるのか。
A.研修生・実習生は知る権利がある。彼ら・彼女らをどのように教育するかは非常に大事なことである。彼ら・彼女らは権利主張できないようになっている。

Q.労働基準法のルールを破ってよいかどうかを論議しているが、アメリカでも最低賃金が引き上げられた際、中小の零細企業を救済する補助金制度がセットで施行された。共通の課題である「社会のルールが壊れていくという面」を強調して改善・改革に取り組む必要があると考えるのだが。
A.全くその通りであると思う。多民族・多文化共生に取り組むことが、労働組合の再生に繋がる。労働組合として何が大事なのかを整理する必要がある。「多民族労働者センター」を設立して問題提起していく必要がある。

第3セッションー院生の意見や感想

・大変困難な課題に取り組んでいる割には、ゲストの鳥井さんの語り口はすがすがしく好感が持てた。また、出口がなかなか見つからない課題が多いなかで、未来社会への展望をもっていることに感激した。
・鳥井氏は「社会のルールが壊れていくことに歯止めをかけ、労働者が安心して働き、生活できる公正な制度をつくることは、日本人も外国人も含めた共通の課題であり、多民族・多文化共生に取り組むことが労働組合の再生に繋がる」と言う。その点に共感した。
・「社会が壊れていく」実態がありつつも、社会問題として広く認知されていない(認知しようとしない)実情がある。しかし、それでも働きに来る、来たい、という問題解決の糸口をどこに求めるべきなのだろうか。


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